みなさん学科やコースはそれぞれ違いますが、面白い授業や先生っていますか?
O:建築で言えば先生は全員面白いですね。全員どっかトンでるというか個性的で。(笑)
N:ファッション学科はみんなフレンドリーな感じで、先生はみんな年上なんですけど、あんまりそういうことを感じさせないで。
G:齋藤明志先生が面白い。
N:一言うと10返ってくるよね。
K:ユニークっていうか。でも、親切に教えてくれますね。細かい所まで親身になって。
先生からなにを教わりました?
O:経験ですかね。先生の経験に基づいたお話。雑談の中で出てくるそういう話っていうのはリアリティがありますから、そこから学ぶことは多いですね。そういう事は教科書には載っていませんからね。
個人的な苦労話であったり、体験談とか。そういう話は先生との距離が近いからこそ聞ける話、現場を経験している先生だからこそ語れる話かもしれませんよね。
K:エステコースなんかだとネイルの授業の時に実際にサロンでやってる先生が、そばにきてしっかり細かく丁寧に教えてくれるので、そこが学校に通っていて力になっているなと感じるところです。
N:私が教わっている先生は笹田学園の元生徒なんですけど、先生が学生時代に作った作品とかを見せてもらったりすると「あぁ、こういうやり方もあるんだな」と参考になりますね。それを自分もやってみるとまた自分なりのアイディアが出たりして。
G:基本的にデザインするまでの過程とか、先生がデザインをするまでになにを考えるのかを教えてくれたりすることが参考になりますね。
クリエイティブな業界には必ず「評価」がつきものです。その「評価」との向き合い方について。
S:自分が作ったものに対して色々な評価があるものだけど、それをどう受け止めるのか。学校にいるうちは成績上の評価はAからDまであるけれども、社会に出たらオールオアナッシングだから。お金になるかならないかなんですよ。AかDかしかないわけだ。これは分野に関わらずそうなんですよね。学校では先生や周りの友人から評価を受ける練習をしているようなものなんだ。賛辞もあれば批判もある。みんなはそんな評価をどのように受け止めてるのかな?
N:私は開き直っちゃうかなー(笑)。もし「これは変なんじゃない」って言われても、その人とは好きな色も違えば趣味も違うので、その人は変だと思っても他の人はいいねって言うかもしれないから。でもその後、別の案も考えてみようかなって思ったりはしますけどね。
G:僕は今まで作った作品は自分として嫌なところも好きな所もあります。自分でダメだなーと思うポイントをやっぱり他人に指摘されることもありますし、自分ではいいなって思う所を他人に批判されることもあります。そういう時は第3者の意見を聞いてから変更するか決めたりします。
O:今回のコンペの作品を制作している時なんかでも、担当の先生と意見が分かれる時があったんです。僕の中でそれを「受け入れる」「受け入れない」の境というのは、自分の中で「この作品はこうでなくてはいけない」というコンセプトみたいなものに対してその変更がどう影響するのか、という所。受け入れてもそれがブレなければ妥協点を見い出して受け入れることもありますし、そうでなければ譲れないというように。
S:絶対譲れない部分を持ってたってことだよね。
O:でもいざ職業となった時にそれでは通じないかも、なんて思います。そのへんが今の自分では難しいかも。苦しむかもしれませんね。
S:でも言われるままではやっぱり教える側からすると教え甲斐がないし、言われた通りのものしか作れないからね。教科書どおりのものは作れても、教科書どおりのものなんて仕事では通用しませんから。
皆さんはこの前のデザインコンペに参加しましたが、どうでしたか?
O:自分の場合は大賞をいただけたんですけど、核になる構想を練るのに時間がかかってしまって。なかなか手を動かすまでいかなかったんですよ。パッと思いついたアイディアで進めてしまうのがなんか悔しくて、もっといいアイディアがあるだろうと粘ってしまう。かなり時間が掛かって11月くらいにやっと「まぁこれでしょう」というのができて、それからは2縲怩Rヶ月しかなくて。もうちょっと時間があればもっといいものができたんじゃないかなと思います。
K:私はモデルとしても参加しながら、ネイルの展示コーナーでネイルの周りに飾るオブジェなどの制作をしました。12月頃からみんなで協力しながら作りました。
S:西尾さんがファッションステージの上のゴミを拾っていてね。作品づくりも大事だけどそういった見えない所での心遣いも大切だと思うんですよね。
N:ステージの上にゴミが落ちてると照明が当たった時に目立つので、みんなでガムテープでペタペタと取っていました。あとはステージの下の部分が見えると見栄えが良くないので、暗幕を張る時に画鋲で留めたりなど地道な作業をしていました。
S:デジタルメディアでも発表しない人が照明係をやったり映像をやったりとか裏方にまわってやってくれた生徒がいる。決してスポットライトが当たらなくても自ら進んでやってくれた人たちに感謝しなければいけない。賞はもらえなくてもそのような経験から掴む物が大なり小なりあるんじゃないかな。
N:一人でやるよりはみんなで協力してやるほうが早く終わりますし、モデルをやらない人なんかは結構時間がありますからそうやって協力することが大事なんじゃないかなって思います。
後藤君の作品も賞をとったけど?
G:自分の場合もあんまり時間がなくて、だいぶ作品が出来上がってから先生に「こんな感じでどうでしょう?」って見せたんですよ。まぁ先生からの意見も多少あったんですけど、時間も無い事だし大幅な変更をせずにそのままいってみたらうまくいきましたね。結果オーライかな(笑)。
和田君はショップのインテリアデザインの模型が展示されてましたよね?
W:商業施設のディスプレイデザインだったんです。ナイキのショップという想定で。建築モデルは縮尺で作るのですが、原寸大のリアルスケールを想像しながら作るのが大変でした。建築モデルではアクリルで作ってる部分はガラスで作ろうかなーとか考えたりして。
S:みんなはまだ原寸大の現場の経験がないけども、仕事ではもちろんCGだろうが建築モデルだろうが最終的には現実のものとして出来上がるわけです。だから、想像力っていうか今考えているこの縮小モデルが原寸になったらどうなるんだろう?どう見えるんだろう?って考えを及ばせながら作ることが大切。それは建築だけじゃなくてファッションもそう。ラフスケッチの時点から最終の出来上がりの布の風合いまで想像する。できる人はそれが見えているね。デジタルメディアは最終形と実際の作業が一番近いよね。でも、コンピューター上でやっていることがフィニッシュに近い分だけ、逆に言えばシビア。素人でもそれっぽいものができてしまうから。プロと素人の差をどこに見いだすかが大事だよね。
S:ハリウッドで活躍している有名な衣裳デザイナーの石岡瑛子さんの話だけど、ラフスケッチはざっくりしてるけど出来上がった衣裳のボタンの位置が1mmでも自分の想定と違うとやり直しをさせるっていうからね。一流と言われる人は頭の中で完璧なイメージができてるんだよ。私もインテリアの仕事に従事していた時、家具なんかもデザインするんだけど、製作する前に現場の寸法を計るじゃない。それがいい加減だといざ出来上がって現場に納めようとした時に入らない。それこそ1mmでも大きいと入らないわけだ。そういうことがあるんだよね。
グラフィックデザインの世界だって1文字間違えただけでもそれが刷り上がってしまったら、何十万枚刷ってあろうが刷り直しになるからね。建築の世界ではミスがそれこそ文字通り命取りになりかねない。
プロの世界ではどれがラクだとかそういうことは無いんですよ。どれも責任重大なんです。
プロというものを目指す以上はさすがと言われることを目標にしてね。責任が重い分だけ頑張り甲斐のある世界だと思うんです。とかくデザインの世界は感性的な部分に見られがちですが、論理的な思考力を持ったデザイナーでなければいけないんです。自己分析であったり作品の分析であったり、そういったバックボーンをベースにして「こうでなければならない」というデザインを作る。あいまいな感性だけではなくてロジカルなデザインの構築ができるデザイナーを目指して欲しいなと思います。